【転載】国立天文台・天文ニュース(252)

アンドロメダ座ウプシロン星に3個の惑星


 アンドロメダ座ウプシロン星に惑星が存在することは、1996年にマーシー(Marcy,G.)とバトラー(Butler,P.)がすでに発見しています。しかし、今回、その惑星が1個だけではなく、3個も存在することが明らかになりました。これは、太陽系以外で初めて発見された、複数の惑星による惑星系です。この発見によって、たくさんの惑星による惑星系は稀なものではなく、銀河系内に多数、普遍的に存在するのでしないかと推測されるようになりました。

 この惑星系は、サンフランシスコ州立大学(San Francisco State University;SFSU)が、リック天文台で観測した同星の11年間の視線速度の観測データを整理して発見したものです。しかしそれだけでなく、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード・スミソニアン天体物理学センター(the Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics;CfA)、およびコロラド州ボールダーの高高度天文台(the High Altitude Observatory;HAO)もまた、ホイップル天文台でこの星を4年以上観測したデータから、SFSUとは独立に、ほとんど同じ結果を導き出したのでした。二つのチームが別々に研究を進めて同一の結果に到達することは、偶然では起こり得ず、この惑星系の存在を確信させる理由になりました。

 この惑星系で、すでに発見されているもっとも内側の惑星は木星の4分の3程度の質量をもち、中心星から0.06天文単位の距離を4.6日周期で公転しています。また、内側から2番目の惑星は少なくとも木星の2倍の質量があり、約0.83天文単位の距離を242日周期で公転しています。距離と周期からみて、太陽に対する金星くらいの関係です。もっとも外側の惑星は木星の4倍以上の質量があって、中心星から2.5天文単位のところを3.5から4年程度の周期で回っていると推定されます。この外側の二つが今回新しく検出された惑星で、円軌道ではなく、かなりつぶれた楕円軌道をもつと思われます。

 1996年にこの恒星に最初の惑星が発見されたのは、その視線速度が異常なふらつきを見せたことによるものでした。しかし、1個の惑星の影響を考慮しただけではそのふらつきを十分に説明することができませんでした。そこから、さらに別の惑星の存在が推測されたのです。その後、第2の惑星をどのように配置しても、まだ視線速度のふらつきを完全に説明することができないことがわかってきました。そして、第3の惑星を考慮に入れることで、はじめて、納得のいく説明が得られたのです。これが、アンドロメダ座ウプシロン星に3個の惑星の存在が推定された手順でした。惑星系の存在が確定すると、つぎには、どのようにしてそのような惑星系が誕生したかを、惑星系形成論から考えなければなりません。これは今後の問題です。

 アンドロメダ座ウプシロン星は、4.1等の明るさでF8型の、太陽に似た恒星です。アンドロメダ座ベータ星とガンマ星の中間にあり、肉眼で見ることができます。地球からは44光年の距離にあり、およそ30億年の年令と推定されますから、太陽よりは若い星です。いまの季節はちょっと見にくい位置にありますが、夏になれば、夜半過ぎによく見えます。気がついたら、惑星系をもつ星として、あらためて見直してみましょう。

参照 San Francisco State University Release(Apr.15,1999).

1999年4月16日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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