【転載】国立天文台・天文ニュース(239)

南極で大量の隕石発見


 文部省は、南極、昭和基地の南約400キロメートルの「やまと山脈」および「ペルジカ山地」周辺で、第39次南極観測隊が、4136個もの大量の隕石を発見、採集したと2月17日に発表しました。隕石探査のために本格的調査隊を組織したのは10年ぶりのため、地球の温暖化でその間に1メートル以上も氷が溶け、これまで氷の中に埋もれていた隕石が露出して、この大量発見につながったと考えられます。

南極地域ではこれまでにもたくさんの隕石が発見されています。日本の南極観測隊が最初に9個の隕石を発見したのは1969年12月21日で、第10次観測隊が「やまと山脈」南部の氷床を調査中の偶然のことでした。この発見は初めはあまり注目されませんでしたが、1973年に第14次観測隊が12個を発見、1974年には9キロメートル四方を組織的に探査して168個もの隕石を発見し、その重要性が認識されるようになりました。それ以後も探査が続けられ、1976年から3年間は日米共同の南極隕石探査採集計画が実施されるなど、1987年までに実に9000個近くの隕石が採集されています。その結果、現在の日本は、世界で最多の隕石保有国になっています。これまでに南極以外で発見された隕石が全世界で2500個程度であることを考えると、南極地域でいかに集中的に隕石が発見されているかがわかります。

 南極大陸ならどこでも隕石が発見できるわけではありません。これまでにたくさん隕石が発見されているのは、前記の「やまと山脈」付近と、アメリカ、マクマード基地の北230キロメートルにある「アランヒルズ」付近の2個所の裸氷の上だけです。長期間にわたって落下したたくさんの隕石に特別の集積メカニズムが働いて、これらの地域に集中したと考えられています。

 発見された隕石は冷凍されたまま日本に運ばれます。以後、解凍、命名、大きさと重量の測定などがおこなわれ、6方からの写真撮影がなされてから、国立極地研究所に保存されます。「やまと山脈」付近で発見された隕石には、たとえば Y-790981 などの番号がつけられて、そのあとは、研究者による研究を待つことになります。

 南極隕石には、これまでにも月起源、あるいは火星起源のものなどが発見され、学界にさまざまな話題を提供してきました。今回の隕石大量採取からまたどんな発見がもたらされるでしょうか。文部省は、「この大量発見で、惑星進化の過程などに関し、宇宙科学が大きく進展する可能性もある。隕石中の粒子の形状が従来のものと異なるものがあり、新種の隕石発見も期待される」と述べています。

参照

1999年2月18日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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