【転載】国立天文台・天文ニュース(236)

これまでで最も明るいガンマ線バースト


人工衛星として地球を周回しているNASAのコンプトン・ガンマ線観測天文台(BATSE)やイタリア-オランダのガンマ線観測衛星ベッポ・サックス(Beppo-SAX)は、1月23日9時47分(世界時)に「うしかい座」の一角で起こったガンマ線バーストを捕らえました。その情報は直ちに世界中に伝えられました。

アメリカ、ニューメキシコ州ロス・アラモスに設置されているロボット光学遷移現象探査実験装置(Robotic Optical Transient Search Experiment;ROTSE)は22秒後に動作を開始し、報告された位置に、これまでなかった星が輝いているのを確認しました。5秒後にその明るさは最大に達して9等級にまでなりました。これは双眼鏡でも見える明るさです。しかし明るさはその後衰え、極大から8分後には、100分の1の14等に落ちてしまいました。それでも、可視光でこれだけ明るく見えるガンマ線バーストが観測されたのは、初めてのことです。

ベッポ・サックスもこれまでにない強力なガンマ線を観測しました。そのエネルギーは毎秒1平方センチメートル当たり35ピコジュールにも達しました。このエネルギーの大きさも、ベッポ・サックスが観測を開始してから最大のものでした。

これらの報告に基づいて、このバーストに対し、地上からの観測が一斉に始められました。カリフォルニア工科大学のオデワーン(Odewahn,S.C.)らは、パロマー天文台の口径1.5メートル反射望遠鏡にCCDを装着してその位置に向け、R等級で18.2等の像を見いだしました。第2次パロマー・スカイサーベイでは、その同じ位置に、R等級21.3等のかすかな像が認められるということですから、おそらくそれが母銀河で、今回観測された18.2等の像がガンマ線バーストの余光(Afterglow)と推測されます。ガンマ線バーストに関して、これだけ明るい母銀河が観測されたのも始めてのことです。一方、ベッポ・サックスの狭域カメラは、その位置に、やはりこれまで知られていなかった強いX線源を検出しています。このバーストの位置は、いくつかの観測から

      赤経  15h25m30.5s
      赤緯 +4446'00"    (2000.0)

と求められています。

明るいガンマ線バーストを観測すれば、よりたくさんの情報が得られます。ガンマ線バーストは、現在解明途上にある天体ですから、少しでも多くの情報を得ようと、その後も各種の観測が続けられています。ワシントン、カーネギー研究所(Carnegie Institution of Wasington)のケルソン(Kelson,D.D.)らは、ハワイの口径10メートル、ケックII望遠鏡で1月24日にそのスペクトル撮影をおこない、紫外域に鉄、マグネシウムのイオンや中性マグネシウムの吸収線を検出しています。そこから得られた赤方偏移はz=1.61で、ざっと90億光年程度の距離と考えられています。

今回のガンマ線バーストは、これまでに観測されたものよりなんと1万倍も明るいのです。「もしこのバーストがわれわれ銀河系内で起こったなら、夜空が明るくなったであろう」とNASAのバナー(Bunner,A.)は述懐しています。

参照

1999年1月28日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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