【転載】国立天文台・天文ニュース(230)
1998年にはたくさんの新彗星が報告されました。今年の彗星発見の特徴として、小惑星探査チームが始めに小惑星として観測し、あとから彗星であることが判明するという経過をたどるものがいくつもあったように思います。その種のものを含めて、今回、ま た新彗星についてお知らせします。
コート・ダジュール天文台のドイツ小惑星探査チーム(The Observatoire de la Coted'Azur-Deutsches Zentrum fur Luft und Raumfahrt Asteroid Survey;ODAS)は、12月15日、「しし座」に18.3等の新彗星を発見しました。この彗星の認識符号は C/1998 X1で、通称はオダス彗星です。軌道はまだはっきり確定しませんが、初期予報のため、国際天文学連合回報に、下記の暫定放物線軌道と予測位置が与えられています。また、多分短周期彗星であろうとのコメントがついています。
近日点通過時刻 = 1998 Aug.19.081 TT 近日点引数 = 63.239 昇交点黄経 = 7.550 (2000.0) 近日点距離 = 1.87795 AU 軌道傾斜角 = 1.261 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998/99 時 分 度 分 AU AU 度 等 Dec.23 10 0.71 +13 47.1 1.744 2.430 123.5 18.1 28 10 0.79 +13 47.3 1.731 2.467 128.6 18.1 Jan. 2 10 0.16 +13 51.0 1.722 2.505 133.8 18.2
これは、11月10日、11日にリニアチームが観測し、見かけから18.5等の平凡な小惑星と考えられ、1998 VS24 の仮符号が与えられた天体でした。しかし、この天体を詳しく調査した同チームのウィリアムズ(Williams,G.V.)は、これが10月24日、28日および11月26日にクロアチアのヴィスニアンでコーレビック(Korlevic,K)らが観測した天体と同一であることに気付き、その観測を併せて、非常に彗星的な軌道をもっていることを突き止めました。
この報告に基づいてさらに観測がおこなわれた結果、何人もの観測者がコマの存在を認め、この見かけから彗星であることが確認されました。これは9.56年の周期をもつ周期彗星で、認識符号は P/1998 VS24 が与えられました。通称はリニア彗星です。国際天文学連合回報による軌道要素と予測位置はつぎのとおりです。
ウィリアムズによりますと、この彗星は1971年10月に木星に0.01天文単位以下にまで大接近し、その後1983年と1995年にも0.5-0.7天文単位にまで接近を繰り返していたということです。
近日点通過時刻 = 1998 Nov. 6.3700 TT 近日点引数 = 245.1677 離 心 率 = 0.244762 昇交点黄経 = 159.1699 (2000.0) 近日点距離 = 3.402590 AU 軌道傾斜角 = 5.0282 長 半 径 = 4.505324 AU 周 期 = 9.563年 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998/99 時 分 度 分 AU AU 度 等 Dec.23 2 35.43 + 8 50.8 2.713 3.409 128.1 18.6 Jan. 2 2 35.63 + 9 5.0 2.837 3.413 118.1 18.8 12 2 37.72 + 9 28.9 2.973 3.416 108.6 18.9参照
1998年12月24日 国立天文台・広報普及室
1998年の天文ニュースの発行はこれで終わります。皆様にご愛読いただいたことに御礼申し上げます。明年は1月7日から発行の予定です.