【転載】国立天文台・天文ニュース(226)
木星の25倍程度と見積もられる質量の褐色わい星が発見されました。これは G196-3と呼ばれる若い恒星の伴星として見出されたものです。
カナリヤ諸島天体物理観測所(Instituto de Astrofisica de Canarias)のレボロ(Rebolo,Rafael)らのグループは、テネリフェ島、テイデ天文台の口径80センチの望遠鏡を使って、褐色わい星、巨大惑星の系統的捜索をおこなっていました。その結果、1998年1月25日の観測で、「おおぐま座」にある11.7等のM型わい星 G196-3 から南西に16.2秒離れたところで、かすかな赤い伴星が存在するのを、赤外光による直接撮像で発見したのです。
これまでに褐色わい星の候補として報告された天体は10個程度しかありません。その中で確実に褐色わい星と考えられているのは、3年前に発見された GL229B(天文ニュース8参照)だけです。褐色わい星の研究には、さらに多くの褐色わい星を発見する必要があります。その点で、新たな褐色わい星を発見は大きな意味をもちます。レボロらは、太陽近傍で低温のわい星を目標に選び、その伴星として存在するであろう褐色わい星、あるいは巨大惑星を、赤外光による直接撮像で探し出そうとしていました。太陽の近くでなければ、伴星は分離して撮像できませんし、暗い恒星のほうが伴星を発見しやすいからです。目標として選んだ52星のうちから、ただひとつ褐色わい星の伴星を発見できたのがこの G196-3 でした。発見されたこの褐色わい星は G196 -3B と名付けられました。
発見された G196-3B は、その後、主星の G196-3 と共に、他の大望遠鏡も使って詳細に調査されました。その結果、主星の G196-3 は、11.75等、実効温度3400度程度のM型のわい星で、太陽から約68光年の距離にあり、年令が1億年程度の若い恒星であることがわかりました。また G196-3B は、視線速度の測定から、ほぼ確実に G196-3 の伴星と考えられ、R等級20.78等のL型星で、実効温度は1800度。質量は木星の15倍程度と見積もられました。主星との距離は350天文単位程度です。このような状況から考えると、その過程がどのようなものであっても、この褐色わい星は、数1000万年程度という比較的短時間に生成したと思われます。この状況は、褐色わい星の生成メカニズムを探る上で重要なものになるかもしれません。
なお、G196-3 は、俗にG番号星と呼ばれるもののひとつで、ローエル天文台の観測に基づいて1971年にギクラス(Giclas,H.L.)らが編集した、固有運動が 26"/年 より大きい8991星のリストに含まれる恒星です。数字の196は乾板番号を示すものだそうです。 この星表による G196-3 の位置は、赤経10時1分8秒、赤緯+50゜37.8'(1950.0) です。
参照
1998年12月10日 国立天文台・広報普及室