【転載】国立天文台・天文ニュース(220)
33年ぶりの出現が期待されていた「しし座流星群」は、日本時間の11月18日夜明け前にそのピークを迎えると予想されていました。17日には日本を寒冷前線が通過し、気圧配置が西高東低の冬型に急変したため、北日本や日本海側の地域は天候に恵まれませんでしたが、関東、東海地区は快晴だったところも多く、各地で流星の出現が観測されました。
放射点が地平線から昇る18日の0時前から、つぎつぎに「しし座流星群」の流星が見え初め、流星雨出現の期待が高まりました。しかし、流星数はその後はあまり増えず、通常の地上観測では、1時間あたり数10個程度の出現に留まり、日本の観測では大出現にはなりませんでした。むしろ、その前日の17日未明の方が出現数が多く、見応えのある流星が多かったということです。どちらにしても、1965年に日本で観測された「しし座流星群」をずっと下回るレベルの出現に過ぎませんでした。それでも、長経路のもの、明るいものなど、いくつもの流星が見え、中には長時間の永続痕を残すものなどもあり、観望を楽しむ人々を喜ばせたようです。
一方、国際天文学連合回報によりますと、アメリカ、ヨーロッパなどの各地で、1時間あたり数100に達する「しし座流星群」の流星が観測されたということです。特に、イギリス、クイーンズ大学のフィッツシモンズ(Fitzsimmons,A.)らからは、カナリヤ諸島、ラ・パルマで、17日4時半(世界時)ころ、1時間あたり2000個に達する流星が観測されたことが報告されました。このような状況から見ますと、今年の「しし座流星群」の出現のピークは、日本時間で17日午後の早い時刻であったと推定され、予測されたピーク時刻より半日程度早まったと思われます。これが、日本の観測で、流星数があまり増加しなかった理由でしょう。それにしても、今回の「しし座流星群」の出現は、1799年,1833年,1966年の出現に比べますと、遥かに小規模であったことは間違いありません。日本の流星関係者の間でささやかれている「マスコミが騒ぎ立てるときには流星群は出ない」というジンクスは、今回も生きていたような気がします。
付け加えておきますと、「しし座流星群」の流星は、来年の11月18日前後数日にもかなり出現すると思われます。また、毎年12月13日前後には「ふたご座流星群」が、8月12日頃には「ペルセウス座流星群」が活動し、ともに流星の出現数は、今回日本で見えた「しし座流星群」を上回ることもしばしばです。そのほかにいくつもの流星群がありますから、流星に興味をもたれた方は、この機会に、それらの流星群も併せてご覧になることをお勧めいたします。
参照1998年11月19日 国立天文台・広報普及室