【転載】国立天文台・天文ニュース(219)
銀河には、数個から数10個がまとまって、直径数100万光年の範囲に集団を作っている場合がしばしばあり、このような集団を銀河群といいます。われわれの銀河系も、アンドロメダ銀河(M31)、さんかく座銀河(M33)、大小マゼラン雲などとともに銀河群を作っていて、これは局部銀河群と呼ばれています。「理科年表」には、銀河系を除いて、局部銀河群の主要メンバーである17個の銀河が記載されています。しかしメンバーはこれだけではなく、現在までに35個のメンバー銀河が確認されています。2年半ほど前の天文ニュース(96)では、「ポンプ座」に新メンバーが発見されたことをお知らせしました。今回は、さらに、新たに3個のメンバー銀河が発見されたことをお伝えします。
これらの銀河は、キットピーク天文台のアーマンドロフ(Armandroff,T.E.)ら、およびカラチェンチェフ(Karachentsev,I.)らのグループが、ともに、第2次パロマー写真星図のデジタル版をコンピュータ処理して発見したものです。この方法によれば、原板を肉眼で観察することでは発見できないような暗い銀河でも発見できるということです。アーマンドロフらが発見した銀河は「アンドロメダ座」にあって「アンドロメダV」と名付けられ、カラチェンチェフらが発見したものは、それぞれの位置から「カシオペヤ系」、「ペガスス系」と呼ばれることになりました。
これらの銀河は、すべて矮小楕円銀河と分類される小さな銀河で、よく知られている渦巻き銀河や大きい楕円銀河に比べるとずっと小さく、また、一般の矮小銀河や不規則銀河とも異なって、もはや星生成がおこなわれていない銀河です。
局部銀河群は、さらに大きく二つの副グループに分けられています。ひとつはわれわれの銀河系を中心とする「銀河系副グループ」、もうひとつはアンドロメダ銀河を中心とする「アンドロメダ副グループ」です。今回発見されたカシオペヤ系、ペガスス系はアンドロメダ副グループに属していますが、アンドロメダ銀河から200キロパーセク以上離れていて、衛星銀河という形ではありません。
局部銀河系としてこれまでに発見されていた35個の銀河では、16個が矮小楕円銀河です。未発見の銀河がまだ存在するであろうことを考慮すると、これは宇宙の全銀河の半分程度が暗い矮小楕円銀河であることを示しているのかもしれません。これまでに発見されている矮小楕円銀河は、その質量がすべて太陽の1000万倍以上ですが、これが銀河質量の下限であるかどうかは、もっとたくさんの暗い銀河を観測してみないとわかりそうにありません。
参照1998年11月12日 国立天文台・広報普及室