【転載】国立天文台・天文ニュース(213)

X線、ガンマ線の津波、地球を襲う


TV、新聞などでも報じられ、ニュースとしてはいささか古いものになりましたが、今年の8月27日世界時10時22分に、X線、ガンマ線の強い放射が、突然、津波のように地球に降り注ぎました。宇宙からのこのような放射を監視するようになってから30年になりますが、このときの放射は、これまでで最大の強度のものでした。この放射を受けて、人工衛星のいくつかは、安全のための保護回路が動作して、観測が止まったりするほどでした。激しい放射は約5分間つづきました。

 このとき、アメリカは夜であったにもかかわらず、この放射によって電離層の電離が急激に進み、一時的にではありますが、太陽の照射を受けている昼間のような状態になりました。電離層の下側の境界が通常の85キロメートルの高度から60キロメートルにまで下がったのです。これによって、たとえばハワイの電波を受信していた出力が急に弱まるといった現象も起こりました。

 このときに到来したX線の強度は、わかりやすい表現をしますと、歯医者でX線撮影をするときの強度の10分の1程度ということです。ただし、大気層に妨げられますから、地表には、X線もガンマ線もほとんど影響を与えることはありませんでした。

 この放射はどこから来たのでしょうか。それは、この放射が5.16秒周期で変動していたことが観測されて、ただちにわかりました。これは「わし座」にある、SGR1900+14 と呼ばれるX線源から放射されたものでした。これは最近活動が活発になって注目されていたX線源で、そのX線が5.16秒周期であることがわかっていたからです。このX線源に一種の爆発現象が起こり、その影響が地球に届いたと思われます。

 このX線源は中性子星であることがわかっています。中性子星とは、恒星が超新星となって爆発した後に残った残骸と考えられ、太陽の3倍程度の質量があるのに、直径は10キロメートルくらいしかなく、1立方メートル当たり10の17乗キログラムという途方もない高密度の天体です。これはまた極端に強い磁場をもち、それによって、中性子星の表面で起こった振動や破壊にともなって、X線、ガンマ線を含む非常に強い放射が生じるのです。中性子星の表面のある一定の領域でこの放射が起こり、5.16秒はその自転周期と推定されています。つまり、その領域が向いた方向に強い放射が起こり、中性子星は、X線の灯台のような働きをしているのです。

 SGR1900+14 はざっと2万光年の距離にありますから、今回地球を襲ったこの放射は、2万年前にこの中性子星で起こった事件の結果です。2万光年を隔てて、なおこれだけの放射が到達するのですから、その事件の規模がどんなに大きいものであったか想像を絶するものがあります。もしこの星から0.1光年の距離にいたら、人間は即死するだろうと推定している人もいます。

 もし、このような中性子星からの放射が地球の近くで起こり、人類の生存に脅威を与えるようなことはないのでしょうか。この疑問に対し、「そんな近くにこのような天体があれば、もうとっくに発見されているはずだ」とカリフォルニア大学のハーレイ(Hurley,Kevin)は述べています。

参照

1998年10月22日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

[天文ニュース目次] [星の好きな人のための新着情報]