【転載】国立天文台・天文ニュース(212)
リンカーン研究所チームが10月2日に報告した小惑星状天体17個のひとつが、その軌道の特性と見かけの様子から、長周期彗星であることわかりました。これは、日本の井狩康一(いかりやすかず)の指摘で気付いたものです。この彗星が C/1998 T1 で、通称はリニア彗星です。国際天文学連合回報による放物線軌道要素と予測位置はつぎのとおりになります。
近日点通過時刻 = 1999 June 25.625TT 近日点引数 = 225.855 昇交点黄経 = 153.122 (2000.0) 近日点距離 = 1.47639 AU 軌道傾斜角 = 170.188 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998 時 分 度 分 AU AU 度 等 Oct.24 1 6.69 +18 49.6 2.456 3.432 166.7 15.3 Nov. 3 0 43.65 +16 6.1 2.413 3.332 153.9 15.1 13 0 22.17 +13 11.8 2.420 3.233 138.9 15.0 23 0 3.47 +10 21.6 2.472 3.133 123.9 14.9
パロマー天文台のミュラー(Mueller,J)は、10月17日、口径1.2メートルのオースチン・シュミット望遠鏡で、黄道帯太陽系外縁部を観測中、「うお座」に彗星状天体を発見し、その日のうちに新彗星と確認しました。小惑星センターのウイリアムズ(Williams,G.V.)は、この天体が9月26,27日に通常の小惑星として観測されていることに気付き、軌道計算の結果、さらにロネオス観測(the Lowell Observatory Near-Earth Object Search;LONEOS)でも9月17日に一晩だけ観測されていることがわかりました。この彗星が P/1998 S1 です。これは短周期彗星で、1992年に木星に非常に接近しています。国際天文学連合回報による軌道要素と予測位置を以下に示します。
近日点通過時刻 = 1998 Nov. 3.180 TT 近日点引数 = 26.489 離 心 率 = 0.41690 昇交点黄経 = 359.183 (2000.0) 近日点距離 = 2.54819 AU 軌道傾斜角 = 10.559 長 半 径 = 4.37008 AU 周 期 = 9.14年 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998 時 分 度 分 AU AU 度 等 Oct.24 0 53.06 +13 4.1 1.575 2.549 165.3 15.6 Nov. 3 0 47.01 +13 4.3 1.617 2.548 154.5 15.6 13 0 43.03 +13 7.4 1.682 2.549 143.9 15.7 23 0 41.56 +13 16.9 1.768 2.552 133.7 15.8
リンカーン研究所チームは、高速で移動する小惑星として「ペルセウス座」に発見した天体のひとつが、彗星であることに気付きました。10月20,21日にわたる4回の確認観測で、この彗星は逆行の、ほぼ放物線の軌道をもつことが確認され、その認識符号はC/1998 U1 となりました。通称は、またもリニア彗星です。国際天文学連合回報による放物線軌道要素をつぎに示しておきます。
近日点通過時刻 = 1998 June 1.479 TT 近日点引数 = 130.116 昇交点黄経 = 210.409 (2000.0) 近日点距離 = 4.06998 AU 軌道傾斜角 = 156.468
なお、天文ニュース(204)で、タッカーの名はつかないとお伝えした彗星の通称は、ロネオス・タッカー彗星 P/1998 QP_54(LONEOS-Tucker)となりました。お詫びして訂正いたします。
参照1998年10月22日 国立天文台・広報普及室