【転載】国立天文台・天文ニュース(197)
「ジャコビニ流星群」は10月9日頃に、「しし座流星群」は11月18日頃に流星が見える流星群です。この二つの流星群は、ともにはっきりした周期性があり、「ジャコビニ群」は13年ごとに、「しし群」は33年ごとに流星出現数が大きく増加します。そして、今年の1998年は、ちょうどこの両方の流星群が出現する周期に当たっています。ですから、今年は流星群の当たり年といえましょう。
実をいうと、20世紀になってから、流星嵐ともいえるおびただしい数の流星が見えたのは、この二つの流星群だけなのです。「ジャコビニ群」は1933年にヨーロッパ西部で1時間当たり6000個、1946年にはアメリカ東部で同じく数千から数万個といわれる流星を出現させました。また「しし群」では、1966年にアメリカ西部で1時間に数万個という流星の大出現が見られたのです。
しかし、困ったことに、どちらの流星群も、その周期の年に確実にたくさんの流星が出るわけではありません。そのため、期待していた人々を、何度もガッカリさせています。たとえば1972年には、「ジャコビニ群」からたくさんの流星が出ると、日本中で騒がれました。しかし、現実にはほとんど流星が現われませんでした。その13年後の1985年には、ほとんど期待されていなかったにもかかわらず、10月8日に、大出現とはいえないものの、思いがけない数の「ジャコビニ群」の流星が夕方の空を彩ったのでした。流星群の流星がどのくらい出るかを予測するのは非常に困難で、ほとんど不可能といっても過言ではありません。
それでは、今年のこれらの流星群は、どのくらい流星が出るのでしょうか。予測ができないまま、マスメディアでは「たくさん出る」という情報が先行しがちで、ちょっと気になります。
当たるかどうかわからないのを前提にして、あえて推測してみましょう。「ジャコビニ群」が見えるとすれば、10月8日から9日にかけての夜の、それも夜明けに近い時刻と思われます。しかし、その時刻には放射点の高度が低い上に、月令18の月がたいへん明るいので、たとえある程度の数の流星が出たとしても、はなばなしい出現とはなりそうもありません。結局、あまり大きい期待はできないと思われます。
一方、「しし群」は、11月18日の夜明け直前が出現のピークと推定されます。このときは月明かりがまったくないので、流星がたくさん出るとすれば、絶好の観測条件になります。流星数は、暗い空のところで、ピーク時に、1時間当たり100から200個といっておきましょう。これだけでもめったに見られない流星出現数ですから、ご覧になった方は、かなり感動を受けるに違いありません。もし、それ以上にたくさんの流星が見えたときは、その分をおまけとして、十分に楽しんでください。また、それだけの流星が見えなかったときは、「やはり出現数の予測は難しい」と再認識していただくことになるでしょう。
なお、しし座流星群についての情報は、11月初め頃に、もう一度お知らせする予定です。
1998年8月20日 国立天文台・広報普及室