【転載】国立天文台・天文ニュース(187)

ポン・ウイネッケ流星群の突発出現


1998年6月27日9時(世界時)過ぎから、日本各地で、突発的な流星群の出現が観測されました。日本は梅雨の最中で全般的に天候が悪く、観測できた場所はあまり多くはありませんでしたが、たとえば、福島県北会津村で会津天文同好会、沖縄県波照間島で下地隆史、和歌山県美里町みさと天文台で浜根寿彦など、各氏から観測、観望の報告がありました。それらによりますと、「うしかい座」あたりを放射点として1時間あたり50個程度の流星出現があったようです。この突発出現はハム電波を利用した電波観測によっても捕らえられ、愛知県の鈴木和博(すずきかずひろ)、大阪府の上田昌良(うえだまさよし)の各氏は、それぞれ通常の3-4倍、5倍程度の流星エコーをカウントしたということです。

この出現は日本で観測されただけではありませんでした。その後21時20分から28日の1時30分(世界時)にかけて、イタリアで同程度の流星出現が観測され、またポルトガルでもたくさんの流星が見られています。さらに28日5時(世界時)には、アメリカ、カリフォルニア州からもこの群の流星を観測したとの報告がありました。流星群が突発出現したことは確実であり、この流星群の出現はまったく予期されていなかったものでした。

 しかし、出現の日と放射点の位置からみて、この突発群は、ポン・ウイネッケ彗星(7P/Pons-Winnecke)を母彗星とする、ポン・ウイネッケ流星群である可能性が高いと思われます。この流星群は、1916年6月28日にヨーロッパで1時間あたり100個といわれるかなりの流星出現を見せたことで有名です。その後母彗星が回帰した1921年に日本で、また同じく母彗星が回帰した1927年にタシケントで、この群の暗い流星が多数観測されました。しかしそれ以降大きな出現はまったく観測されていません。これは、木星の摂動によって母彗星の軌道が変化したためといわれ、ポン・ウイネッケ流星群が再び活発な出現をすることは、もはやないと考えられていたのです。

 ポン・ウイネッケ彗星は6.38年周期で太陽を回っている周期彗星で、1996年1月に21回目の回帰で近日点を通過しています。今回の出現がポン・ウイネッケ流星群の出現であるとしても、母彗星の回帰にともなって流星数が増加したものではありません。それでは、どうして今年になって突然流星が出現したのでしょうか、今回、71年振りに突発的に出現したことは、流星群出現のメカニズムについてひとつの疑問を投げかけたものといえましょう。

参照

1998年6月30日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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