【転載】国立天文台・天文ニュース(184)

へびつかい座新星(Nova OPH 1998)の発見


 長野県佐久町の高見沢今朝雄(たかみざわ けさお)さんは、6月15日(世界時)に写真撮影したネガから新星状の天体を発見しました。使用機材は、100mm F4.0のカメラレンズと T-MAX 400 フィルムで、各4.5分の露出で撮影をおこなっていたものです。発見された位置は「へびつかい座」で、報告された赤経・赤緯は以下の通りです。

          赤経  17時 32分 00.0秒
          赤緯 -19度 13'  56.0"     (2000.0)

 カリフルニア大学のフィリペンコ(Filippenko, A.V.)らは、18日にLick天文台の口径3メートルの望遠鏡でスペクトル観測をおこないました。その結果、水素とヘリウムの強い輝線を検出し、高見沢さんの発見した天体は新星と確認されました。また、特に強力な輝線であるHαのスペクトルから非常に大きな膨張速度(12000 km/s)が示唆され、変化の速い新星であると考えられます。この種の新星から放出された物質は、周辺の物質と強く相互作用するため、X線や電波領域でもたいへん明るくなるタイプであると予測されています。

 1994年2月17日から1998年5月19日の間に、高見沢さんによって撮影されていた同じ領域のネガには、この位置に星は写っていませんでした。発見翌日の6月16日(世界時)、に八ケ岳南麓天文台の串田夫妻がおこなった3枚のCCD撮影から、赤経17時31分59.82秒、赤緯 -19度13'57.0" と位置が報告されました。USNO-A1.0星表によると、B=18.0、R=16.8 等の星が存在しており、また京都大学の加藤太一さんは、X線観測衛星ROSATで観測された 1RXS 173200.0-191349 も今回発見された新星と同一の天体である可能性も指摘しています。

 更に17日(世界時)、ハンツル(Hanzl, D)らが口径40センチメートルの望遠鏡とCCDによって観測された「へびつかい座新星」の精密位置は、

          赤経  17時 31分 59.79秒
          赤緯 -19度 13'  56.0"     (2000.0)

と修正され、過去に観測された上記の天体である可能性が益々強くなってきました。もしこの新星が、過去に爆発を起こした反復新星の仲間であるとすると、ROSATの観測時期にX線源として輝いていた可能性も考えられます。今回発見された天体は、かなり注目に値する新星であろうと思われ、過去のパトロール観測の更なる調査と今後のモニター観測が重要になります。

参照

1998年6月19日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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