【転載】国立天文台・天文ニュース(180)
リンカーン研究所チームがまた新しいリニア彗星を発見しました。5月26日に、核光度18等の明るさで「へびつかい座」に発見したものです。認識符号は C/1998 K5 になりました。
リンカーン研究所チームは、地球に接近する小惑星を検出する目的で、移動速度が大きい天体を探しています。そこで探し出したこの種の天体の中で、初期の軌道決定から求めた離心率が1に近いことから、この天体に「彗星ではないか」という疑いがもたれたのです。しかし、軌道傾斜角も小さく、見かけの性状も小惑星的であり、はっきり彗星との断定はできませんでした。
5月29日になって、マクドナルド天文台の口径76センチ反射望遠鏡で観測した像に尾が伸びているのをシーラス(Shelus,P.J.)が確認、さらにその後プラベク(Pravec,P.;オンドリヨフ天文台、65センチ反射鏡)、ベイル(Veillet,C.;カナダ-フランス-ハワイ3.6メートル反射鏡)、杉江(すぎえあつし;ダイニック天文台60センチ反射鏡)などもそれぞれ尾を認め、彗星であることが確認されました。
MPEC 98i08 による暫定放物線軌道要素と予測位置をつぎの表に示しておきます。
近日点通過時刻 = 1998 July 17.3339 TT 近日点引数 = 992634 昇交点黄経 = 2113074 (2000.0) 近日点距離 = 0.963848 AU 軌道傾斜角 = 100372 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998 時 分 度 分 AU AU 度 等 June 4 17 58.33 +13 27.9 0.250 1.217 140.1 14.8 6 18 8.73 +16 52.6 0.236 1.197 136.6 14.6 8 18 20.70 +20 35.3 0.223 1.178 132.7 14.5 10 18 34.56 +24 34.9 0.212 1.159 128.4 14.3 12 18 50.68 +28 47.8 0.203 1.140 123.7 14.1 14 19 9.46 +33 8.4 0.196 1.123 118.7 14.0 16 19 31.31 +37 28.4 0.191 1.106 113.5 13.8 18 19 56.57 +41 37.1 0.188 1.090 108.2 13.7 20 20 25.36 +45 22.6 0.188 1.074 103.0 13.7 22 20 57.43 +48 33.5 0.190 1.060 98.0 13.6 24 21 32.02 +51 1.2 0.194 1.046 93.4 13.6 26 22 7.80 +52 41.5 0.200 1.033 89.1 13.6 28 22 43.19 +53 35.8 0.207 1.021 85.4 13.7 30 23 16.73 +53 49.9 0.216 1.010 82.2 13.7
ここから見ますと、この彗星は比較的に速く「ヘルクレス座」、「こと座」、「はくちょう座」とほぼ銀河に沿って移動し、6月19日頃に地球にもっとも近付く0.188天文単位の距離にまできます。そのときの見かけの位置は「はくちょう座」の一等星デネブのやや西のところになります。その後太陽にはさらに近付き、近日点通過は7月17日と計算されています。明るくなっても13等級台ですから、小口径の望遠鏡で見るにはちょっと骨が折れるでしょうが、見やすい位置ですから、がんばってみてください。
参照1998年6月4日 国立天文台・広報普及室