【転載】国立天文台・天文ニュース(176)
パロマー天文台のミュラー(Mueller,Jean)は、第二次パロマー・スカイサーベイの観測中に、5月16日、口径1.2メートルのシュミット望遠鏡によって、「こじし座」に17.5等の新彗星を発見しました。東にごく短い尾がでていると報告されています。引き続いてあちこちで追跡観測がおこなわれて存在が確認され、この彗星には C/1998 K1 の認識符号がつけられました。通称はミュラー彗星です。
これまでの観測から暫定放物線軌道が求められ、それによる予測位置が計算されています。国際天文学連合回報によるそれらの値をつぎに示します。
近日点通過時刻 = 1998 May 23.511 TT 近日点引数 = 145.716 昇交点黄経 = 14.925 (2000.0) 近日点距離 = 3.73200 AU 軌道傾斜角 = 37.700 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1998 時 分 度 分 AU AU 度 等 May 17 10 38.55 +32 23.0 3.549 3.732 92.5 16.0 22 10 40.35 +31 11.0 3.612 3.732 88.9 16.0 27 10 42.52 +29 58.8 3.677 3.732 85.3 16.0 June 1 10 45.02 +28 46.5 3.742 3.733 81.7 16.1 6 10 47.83 +27 34.3 3.808 3.734 78.2 16.1 11 10 50.91 +26 22.3 3.874 3.736 74.7 16.2 16 10 54.23 +25 10.5 3.939 3.738 71.2 16.2 21 10 57.78 +23 59.1 4.005 3.741 67.8 16.2 26 11 1.54 +22 48.1 4.070 3.744 64.4 16.3
発見後に近日点に近づいて多少は明るくなりましたが、この軌道要素からわかるように、近日点距離が3.7天文単位もあります。したがって、この彗星は太陽にも地球にもそう接近することはなく、特に明るくなることもありません。16等級の明るさですから、小望遠鏡での観測は困難でしょう。
なお、ミュラーの彗星発見は昨年5月以来ですが、これで12個目になり、女性としての彗星発見記録を更新しつつあります。
参照1998年5月21日 国立天文台・広報普及室