【転載】国立天文台・天文ニュース(173)

銀河系内のマイクロクェーサー


クェーサーは、ほとんどの方がその名を聞いたことがある天体でしょう。30年以上も前に発見された、非常に遠くの、極めて明るい天体です。当初はどうしてこのような天体が存在するのか説明がつかず、宇宙の謎のひとつでした。現在、クェーサーは明るい活動銀河核で、中心にある巨大質量のブラックホールからエネルギーを得て輝くと考えられています。そして、これまでに発見されたクェーサーは数1000個に達しています。

これらのクェーサーは、ときに細く集中したガスのジェットを光速に近い速さで両側に吹き出すことが観測され、そのメカニズムが問題になっています。しかし、あまりにも遠い天体なので、観測も困難であり、クェーサーには、解決されていない問題がたくさん残されています。

これに対して、マイクロクェーサーという言葉は、これまで聞いたことがない方が多いのではないでしょうか。これは銀河系内にある天体で、クェーサーに比べればその大きさは極めて小さいですが、小さいなりに、その構造や物理的状態がクェーサーに類似しているために、このように名付けられたものです。具体的には、連星系の一方が、太陽の数倍程度の質量をもち高速で自転しているブラックホールであり、もう一方の恒星から供給されたガスがブラックホールの周りに降着円盤を作っているという天体を想像すればよいでしょう。これは、スケールが数100万倍も違っていることを別にすれば、巨大質量のブラックホールまわりに、母銀河から供給された物質が降着円盤を作っている状況とよく似ています。それだけでなく、どちらも、ときに、その両側に、光速に近い速さで激しくジェットを吹き出すのです。

マイクロクェーサーはいくつか発見されていますが、ここでは GRO1915+105 と呼ばれているマイクロクェーサーについて述べましょう。これはX線観測衛星GRANATが1992年8月15日に、変動するX線源として「わし座」でとらえたものです。およその位置は、アルタイルの10度ほど西で、ほぼ銀河面に近いところです。光での明るさは21等より暗く、距離はおよそ1万光年と見積もられています。繰り返された観測で、これまでに5回ジェットの吹き出しが認められ、マイクロクェーサーとしての性格がはっきりしてきました。興味をもった研究者たちは、人工衛星によるX線観測、大型望遠鏡による赤外観測、VLAアンテナを使っての電波観測など、いくつもの波長域での観測を続け、すでにさまざまの特徴をつかんでいます。

マイクロクェーサーからジェットが吹き出すのは、高速で自転しているブラックホールからエネルギーを得ていると考えている人もいます。それが正しいかとうかは別として、これは、ブラックホール近くの非常に強い重力場で起こる現象です。強い重力場での現象を考えるには、相対論的物理学を使う必要があります。そういう点からも、ジェットを吹き出すメカニズムを理解することは、理論上からも、大きな問題になっているのです。比較的に近距離にあるマイクロクェーサーの物理を解明することは、はるかに大規模なクエーサーを理解する上にも役立つに違いありません。

参照

1998年5月7日          国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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