【転載】国立天文台・天文ニュース(166)
チリ、ビニャ・デル・マール市のリラー(Liller,W.)は、3月22日(世界時)に撮影した3枚の写真から、7.8等級の新星らしい天体を「いて座」に発見しました。その概略の位置は、「いて座」のデルタ星とラムダ星のちょうど中間のあたりです。その位置は、ここしばらくは、夜明け前の東南の空です。3月18日に撮影した写真には、その付近に11.5等より明るい恒星はありませんでした。したがって、その後4日の間に増光したと見られます。
この天体は、国際天文学連合によって新星と認定され、「いて座新星1998(Nova Sagittarii 1998)」と名付けられました。八ケ岳南麓天文台、串田嘉男(くしだよしお)の測定によるその精密位置は、
赤経 | 18時 21分 40.47秒 | |
赤緯 | -27度 31' 38.0" | (2000.0) |
です。
この新星は、今年になってから初めて発見された新星です。また、新星の発見は、昨年6月に同じくリラーによって発見された「さそり座新星1997」以来9か月ぶりのことです。
一般に新星は、そのスペクトルによって、電離鉄(FeII)の輝線が強いFeII型と、ヘリウムと窒素の輝線が強い He/N型に大きく分類されます。チリ、ラシラにあるヨーロッパ南天天文台の、口径1.54メートル、デーニッシュ望遠鏡で3月24日に撮影したスペクトルによりますと、この「さそり座新星1998」はFeII型で、爆発後の初期の段階でとらえた銀河系内の新星ということです。なお、FeII型の新星は、He/N型に比べてその変化が比較的ゆっくりであるといわれています。発見後この新星は、何人かの人によって、3月23日には7.4等から8.2等の明るさに、24日には7.6等から8.5等の明るさに観測されています。 参照1998年3月26日 国立天文台・広報普及室