【転載】国立天文台・天文ニュース(165)

地球に発見された連鎖クレーター


 1994年にシューメーカー・レビー第9彗星がいくつもの破片になって木星に衝突したことは、記憶されている方も多いことでしょう。つぎつぎに衝突した破片は、木星の自転に伴って、木星上の同じ緯度のところにきれいに並ぶ衝突痕の連鎖を作りました。この衝突から、「もし、この衝突が地球でおこったらオオオァ廚箸いα杼をした方もあったに違いありません。

 もちろん、過去の地球には何回もの天体の衝突がありました。これまでに約150個の天体衝突の痕跡がクレーター等の形で地球上に見つかっています。その中には、シューメーカー・レビー彗星の衝突のように、破砕した天体がつぎつぎに衝突して作った連鎖クレーターがあるかもしれません。

 カナダ、ニューブランズウィック大学のスプレイ(Spray.John G.)らは、こうした立場から地球上に存在する衝突クレーターを見直した結果、今から2億1400万年前にできた5個のクレーターが、破砕した一群の天体が衝突してほぼ同時に生じた連鎖クレーターであることを推定しました。

 これらの衝突クレーターの大きいものは、フランスのロシュショール(Rochechouart)クレーター(直径25km)、カナダのマニコーガン(Manicouagan)クレーター(100km)とセイント・マーティン(Saint Martin)クレーター(40km)です。最近の年代測定から、これらはみな三畳紀の末、いまからおよそ2億1400万年前にできたものであることがわかっています。これらは現在北緯45.8度から51.8度の間に分布し、同じ緯度上にあるわけではありませんが、プレート運動による大陸の動きを過去に戻して、2億1400万年前の位置で考えると、これら三個のクレーターは、その時代の緯度で、ほとんど北緯22.8度の線上に並び、その誤差は1度以下に納まります。同時代にできた三個のクレーターが同一緯度に並ぶのが偶然であるとは、ほとんど考えられません。

 これに加えて、ウクライナにあるオボロン(Obolon)クレーター(15km)とアメリカ北部にあるレッド・ウイング(Red Wing)クレーター(9km)もほぼ同時期にできたと推定されています。この二つは上記の三個のクレーターと同じ緯度ではありませんが、オボロンとロシュショールを結ぶ線も、セイント・マーティンとレッド・ウイングを結ぶ線も、22.8度の緯度線と一定の傾きをもつ平行な大円上にあります。この事実は、ある天体がまず大きく三つに分裂し、あとからそのうち二つがさらにこわれて小さい破片を生み出し、それらがつぎつぎに地球に衝突したことを想像させます。まずロシュショールとオボロンのクレーターを作った一対が衝突し、つぎに、地球自転によってやや西にずれた地点にマニコーガンの衝突が起こり、最後にセイント・マーティンとレッド・ウイングを作った破片の一対がもっとも西の地点に衝突したという順序です。ロシュショール・クレーターとセイント・マーティン・クレーターは、その時代の経度で43.5度離れていますから、これらの衝突が3時間足らずで起こったことがわかります。こうして衝突した天体が小惑星であったか彗星であったかは、いまのところよくわかっていません。

 白亜紀の末に起こった天体衝突によって生物種の大量絶滅が起こり、それによって時代が第三紀に移り変わったことはよく知られています。ここで述べた衝突によっても同様な事態は起こらなかったのでしょうか。実は三畳紀にも何回か生物種の大量絶滅が推測されています。そのひとつは、この連鎖クレーターを作った衝突によってひき起こされたものかもしれません。

参照

1998年3月26日          国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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