【転載】国立天文台・天文ニュース(164)
2028年に小惑星1997 XF11が地球に非常に近づくことは、天文ニュース(162)でお知らせしたとおりです。最悪の場合には地球に衝突するかもしれないと取り沙汰もされて、一般の話題にもなりました。そして、軌道確定のために今後の観測の重要性が指摘され、一方、過去にこの小惑星が観測されていないかの調査もなされました。
その結果、ジェット推進研究所のヘリン(Helin,E.F.)らが、1990年3月22日にこの小惑星を観測していたことがわかりました。パロマー山の口径46センチのシュミット望遠鏡で撮影したフィルムに、この天体が17.3等の明るさで写っていたのです。この発見によって、これまで88日しかなかった観測期間が一挙に8年に延び、軌道決定の精度が大きく向上しました。
再計算された軌道では、2028年の接近は10月26.3日(世界時)に起こり、最接近距離は0.0064天文単位となりました。これは約96万キロメートルに当たり、月の2倍余りの距離になります。計算誤差を考慮しても、もう地球に衝突する心配はありません。 ごく大ざっぱな推定ですが、明るさからみて、この小惑星は直径1マイル(1.6キロメートル)程度の大きさと見積もられます。最接近時には、6等級くらいの明るさで、数時間くらい肉眼で見える可能性もあります。ただし、日本では昼間の時間帯ですから、直接に見るためには、アメリカかヨーロッパへ行く必要がありそうです。
国際天文学連合回報(IAUC 6839)による、1997 XF11 の軌道要素はつぎのとおりです。
近日点通過時刻 = 1997 July 1.1954TT | 近日点引数 = 102.4645度 |
離 心 率 = 0.483775 | 昇交点黄経 = 214.1319度 (2000.0) |
近日点距離 = 0.744247 AU | 軌道傾斜角 = 4.0948度 |
長 半 径 = 1.441710 AU | 公転周期 = 1.731年 |
平 均 運 動 = 0.5693602度/日 |
なお、この天体は、1957年には0.015天文単位に、また1971年には0.032天文単位にまで接近していたはずです。
参照1998年3月19日 国立天文台・広報普及室