【転載】国立天文台・天文ニュース(162)

地球に接近する小惑星 1997 XF11


1997 XF11は、1997年12月6日に、アリゾナ大学のスコッテイ(Scotti,J.V.)が、スペースウォッチ・プログラムの観測中に、口径91センチの望遠鏡で発見した小惑星です。発見当時の明るさは19.1等で、「かに座」の西端を逆行しているところでした。その当初の軌道から、この1997 XF11は、「地球に衝突するおそれのある小惑星(potentially hazardous asteroids;PHAs)」のひとつであると考えられました。この種の天体の108番目のものです。発見直後には、滋賀県、ダイニック天究館の杉江淳(すぎえあつし)、群馬県、千代田観測所の小島卓雄(こじまたくお)もこの天体の観測をおこなっています。

 その後この1997 XF11の観測は続けられ、この3月4日には、マクドナルド天文台のシーラス(Shelus,P.J.)が口径76センチの望遠鏡で観測をしています。それまでの88日にわたる観測から求めた軌道要素によりますと、1997 XF11は、30年後の2028年10月26日(世界時)に、地球から僅か0.00031天文単位の距離のところを通過します。これは通常の距離で表わすと4万6000キロメートル余りで、月までの距離の8分の1しかありません。過去に観測された小惑星でもっとも地球に近づいたのは1994 XM1で、これは1994年12月9日に、地球に10万キロメートルにまで接近したという記録をもっています。この1997 XF11はその半分以下にまで近づくことになりますから、まさに記録的な接近といえましょう。

 もっとも、上記の数値は、求めた軌道要素が正確であるとした場合の話です。観測には誤差がつきもので、その結果軌道要素にも誤差が入り込みますから、その接近距離がそのまま実現するとは限りません。しかし、誤差を考慮しても、そのときに0.002天文単位(30万キロメートル)と、月よりも近づくことは確実と考えられます。接近距離を確定するためにはより精度の高い軌道要素が必要で、そのためには、さらに観測をおこなわなければなりません。

 1997 XF11は、現在は21等くらいの明るさで、地球から1.6天文単位くらいの距離のところ、見かけでは「オリオン座」と「ふたご座」の境界付近を順行しています。この小惑星の公転周期は1.73年で、つぎには2000年2月に衝になり、19等ぐらいの明るさで見えるはずです。また、2002年10月31日には0.065天文単位(970万キロメートル)にまで近付き、13.7等ぐらいに見えると予測されます。

参照

1998年3月12日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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