【転載】国立天文台・天文ニュース(149)

イータ・カリーナ星に変化が起こるか?


りゅうこつ座イータ星(イータ・カリーナ)が近々爆発的に明るくなるかもしれない。一部でそんな予測がされています。もし、推論されたその予言が当たったなら、天文学にとってはすばらしいことです。

イータ・カリーナはたいへん奇妙な変光星です。青色巨星のひとつですが、銀河系の中でもっとも明るく、かつ、もっとも不安定な恒星と言われることもあります。約8000光年の距離にありますが、ほぼ赤緯マイナス60度という南の空に位置しますので、残念ながら日本からはほとんど見ることができません。通常は6-7等の明るさですが、ハレー彗星で知られているハレー(Halley,E.)が1677年にセント・ヘレナ島で4等級と観測したのを最初に、その後不規則な間隔で増光、減光を繰り返すことが観測されています。1843年にはなんとマイナス0.8等に達し、全天の恒星ではシリウスに次ぐ明るさになったといわれます。しかし、1856年に0.3等になったのを最後に、その後目立つほどの明るさになってはいません。1994年、1995年にハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されたイータ・カリーナの写真には、大量の物質が激しい勢いで砂時計型に膨張している様子がまざまざと捕らえられていて、この恒星が並みの星ではないことを示しています。この物質は、おそらく1843年の増光のときに噴出したものでしょう。

アメリカ、ゴダード・スペースフライトセンターのコクラン(Corcoran,Micheal F.)らのグループは、ローサット衛星を使って、過去1年半以上継続してイータ・カリーナのX線放射を観測し、つぎの事実を突き止めました。

(1) 1997年1月以降、X線放射の平均フラックスが加速的に増加していること。
(2) そのX線フラックスに、85日周期の突発的増加が重なっていること。

彼らは、85日周期のフラックス増加の理由として、(a)85日周期の近接連星であるため。(b)単独星であるが、自転周期が85日であるため。(c)恒星自体の脈動周期が85日であるため、などの理由を推測していますが、いまのところ、そのどれであるかの決め手はありません。

一方、X線放射の平均フラックスが増加する理由として、イータ・カリーナを、離心率の大きい、5.5年周期の伴星をもつ連星系とするモデルが提案されています。そのスペクトル観測から、この星に5.5年を周期とする変化のあることが、すでに突き止められているからです。

この連星モデルからは、両星の恒星風が衝突したところでX線を放射するメカニズムが考えられます。その場合は、主星と伴星がもっとも近づく近星点でX線放射のフラックスが最大になります。いま考えられているモデルでは、1998年1月1日に両星が近星点に達するそうですから、何か大きい変化があるとすれば、この日時前後になるであろうというのがはじめの予測の根拠になっているのです。

ブラジル国立天文台のロープス(Lopes,D.F.)らは、1.6メートル望遠鏡による12月10日のスペクトル観測で、イータ・カリーナの高励起のスペクトル線が完全に消え、モデルによる予測に沿った周期的変化が起こっていると報告しています。予測がどこまで的中するか、このあとの変化を見守ることにしましょう。

参照

1997年12月18日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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