【転載】国立天文台・天文ニュース(139)

天王星に二つの新衛星


 カナダ理論天体物理学研究所(Canadian Institute for Theoretical Astrophysics)のグラッドマン(Gradman,B.J.)らのグループの報告によりますと、10月はじめ、天王星に新たに二つの衛星らしい天体を発見したということです。これらの天体はパロマー山天文台の5メートル反射望遠鏡に装備したコスミックカメラで9月6日および7日におこなったCCD撮像から見出したもので、暗い方の S/1997 U1 は天王星の東方6分の位置にあってR等級が21.9等、明るい方の S/1997 U2 は西北西7分の位置でR等級が20.4等と報じらました。

 この報告に基づいて、アメリカ、ニューメキシコ州のオファット(Offutt,W.)が10月9日に U2 の観測に成功、さらに10月末にはパロマー山の5メートル望遠鏡およびハワイの2.2メートル反射望遠鏡がいずれも二つの衛星の再観測に成功し、新衛星が存在することは確実になりました。天王星に衛星が発見されたのは、1986年に宇宙探査機ボイジャー2号が接近して以来11年ぶりのことです。

 それらの観測をもとに、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのマースデン(Marsden,B.G.)らが求めた暫定軌道によりますと、U2 は離心率が大きく(0.5程度)、逆行で、天王星にもっとも近づく近点距離が約0.018天文単位です。また U1 も逆行と思われますが確定的ではなく、近点距離は約0.032天文単位になります。これは、どちらも、これまでに知られていた衛星のはるか外側を公転する衛星です。衛星の反射率を0.07と仮定して計算しますと、U1 の直径は約80キロメートル、U2 の直径は約160キロメートルになるということです。

 天王星にはこれまでに15個の衛星が知られていました。そのうち、ハーシェル(Herschel,William)が1787年に発見したオベロンとチタニア、ラッセル(Lassell,William)が1851年に発見したアリエルとウンブリエル、カイパー(Kuiper,Gerald.P.)が1948年に発見したミランダは地上からの観測で発見した衛星です。1986年1月に宇宙探査機ボイジャー2号が天王星に接近したとき、それら5個の衛星の内側にさらに10個の新しい衛星を発見したので、天王星の衛星は15個になったのです。最初に発見された衛星に、シェクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」の妖精の王と王妃のオベロン、チタニアの名を付けたことから、そのあと発見された衛星にも、すべてシェクスピアの作品に出てくる人物、妖精の名が付けられるようになりました。ボイジャー2号が発見した衛星には、ジュリエット、オフェリア、コーデリア、ポーシャ、デスデモーナなどの名が付けられています。

 今回発見された16,17個目の衛星は、今のところ S/1997 U1,S/1997 U2 と記号で呼ばれていますが、いずれ国際天文学連合に属する「太陽系天体命名委員会」が適当な名を付けると思われます。やはりシェクスピアの作品から名付けられるのでしょうか。

参照

1997年11月6日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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