【転載】国立天文台・天文ニュース(138)

今年の「しし座流星群」


 「しし座流星群」は「しし座」を放射点にして、11月中旬に数多くの流星を降らせる流星群で、過去に何回も大出現を見せたことでも有名です。中でも、1799年、1833年の流星出現は歴史的にも特筆されるもので、肉眼で見えた流星数が、1時間当たり数万から数10万個にもなったと伝えられています。

 この流星群はほぼ33年を周期として出現数が増減を繰り返すことが知られています。しかし33年ごとのピークの年になっても、必ず上記のような何万個もの流星が見られるとは限らず、1時間当たり数100個の出現にとどまる場合もあります。特に、期待された1899年、1932年のピークには出現数が予想をかなり下回ったため、人々の落胆は大きく、「流星群は衰えて、もはや昔のような大出現は見られない」とさえいわれました。それにもかかわらず、1966年11月17日には、アメリカ西部で、思いがけない大出現がとらえられ、1時間当たり数万個の流星が観測されました。「しし座流星群」は決して衰えたわけではなかったのです。そして、次回の出現が期待されました。

 その「しし座流星群」のつぎのピークは1998年、あるいは1999年と考えられ、もう目前に迫っています。この流星群の粒子をひき連れた母彗星のテンペル・タットル彗星は今年の3月に検出され(天文ニュース90参照)、順調に太陽に近づいています。近日点通過は1998年2月27日の予定です。その接近につれて、3年ほど前から、「しし座流星群」の活動はしだいに活発になってきています。昨年も一昨年も、明るい流星がいくつも観測されているのです。ピークの年が近づいているので、今年も間違いなく流星が見られることでしょう。

 日本では、今年は、11月18日の0時から夜明けまでが流星出現のヤマと思われます。「しし座」の放射点が東の地平線から昇ってくるのが0時少し前ですから、それより早い時間帯には「しし座流星群」の流星を見ることはできません。また、夜が明けて明るくなってしまえば、もちろん流星を見ることはできません。したがって、観測できるのは、必然的にこの時間帯になります。

 メースン(Mason,John W.)の予測によると、今年もっとも条件がよいのは北太平洋地域で、1時間当たり1000個程度の流星出現が期待できるとのことです。しかし、日本では、地域が少しずれている上に月令18の月が明るすぎて暗い流星が観測できないので、たとえ予想通りの出現があったとしても、観測できるのはその数分の一から1割程度になってしまうことでしょう。それでも、来年の出現を占うためにも、今年の11月17日、18日、19日には、夜明け前の空を眺めてみたらどうでしょうか。きっと、月明の中に、明るい流星がいくつか見えるに違いありません。

 来年の1998年は日本の観測条件が非常によく、月も見えませんから、11月18日の夜明け前には1時間あたり5000個ぐらいの流星が見える可能性もあるということです。今年にしても、来年にしても、流星出現数を確実に予想することはできませんが、めったにない機会が近づいていることは確かです。見落として、あとで悔やむことがないように、前もって申し上げておくことにします。

参照 Mason,J.W., J.Br.Astro.Assoc. 105,p.219-235(1995).

1997年10月30日       国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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