【転載】国立天文台・天文ニュース (108)
太陽から遠く離れ、ほとんどが海王星軌道よりも遠い距離に存在し、よくカイパーベルト天体、あるいはセントールなどと呼ばれる一群の小天体があります。この種の天体の捜索、研究をしているハーバード大学のリュー(Luu,Jane)らのグループは、これまでのカイパーベルト天体に比べて特に離心率が大きく、長く伸びた楕円軌道をもつ天体である 1996 TL66 の発見を公表しました。これは軌道の形から見て、新種のカイパーベルト天体と云えそうです。この 1996 TL66 は、遠日点では太陽から130天文単位という距離にまで遠ざかります。これは冥王星の軌道半径の3倍にも達する距離です。
この 1996 TL66 は、1996年10月9日に、ハワイ大学の口径2.2メートル望遠鏡で発見されました。発見時の明るさはR等級で20.9等と、この種の天体としてはこれまでにもっとも明るいものでした(普通のカイパーベルト天体は22-23等程度で発見されるものが多い)。明るさから推定した直径は490キロメートル、質量は地球の10万分の1程度と思われます。
発見時には、太陽から約35天文単位と冥王星軌道と同程度の距離でしたが、その後の観測から、この天体が大きくつぶれた楕円軌道をもつことが明らかになりました。求められた軌道長半径が83.77天文単位、離心率が0.581であることから、遠日点では130天文単位を越える遠距離にまで太陽から離れることがわかります。しかし現在は近日点近くに位置していますから、1996 TL66 が遠日点に到達するのは、いまからざっと380年後のことになります。
今回公表された 1996 TL66 は、さらに多数存在するこの種の天体の最初のものと思われます。これらの天体は、これまでに発見されているカイパーベルト天体と、太陽系のはるか外側にあり、彗星のたまり場、あるいは故郷などと呼ばれているオールト雲との間に存在する天体として、太陽系の成立やその物質分布を知るために重要な存在と思われます。
なお、天文ニュース(60)でカイパーベルト天体の発見を 1996 SZ4 までお知らせしま した。その後に発見されたものを以下に付け加えておきます。
a | e | i | |
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1996 TK66 | 42.47AU | 0 | 5度 |
1996 TL66 | 83.77 | 0.58 | 24 |
1997 CU26 | 15.78 | 0.18 | 23 |
1997 CQ29 | 44.41 | 0.07 | 3 |
参照
1997年6月5日 国立天文台・広報普及室