【転載】国立天文台・天文ニュース (107)
アメリカ、アイオワ大学のフランク(Frank,Louis Albert)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)の極地観測衛星ポーラーによって、地球に多数の雪玉状の氷の塊が降りそそいでいる事実を確認したと発表しました。これは一部の新聞にも報道されました。
発表によると、これらの雪玉は数10トン程度の塊で、毎日、何1000個という数が地球に衝突しているというのです。しかし、地表上1000キロメートル以上のはるか高空で分解してしまうために、地球の住民やスペース・シャトルの乗組員などに直接の影響はまったくないということです。この事実はフランク自身が開発してポーラー衛星に搭載したカメラによって発見されました。カメラはこれらの雪玉が地球の極地方に突入し分解する過程を、可視光および紫外線による光の筋としてとらえています(これらの画像はインターネット・ホームページhttp://pao.gsfc.nasa.gov/gsfc/newsroom/flash/flash.htm で見ることができます)。また、この雪玉に含まれる水が解離し、水素原子が1個はぎとられたときに生じる酸素-水素の結合した分子が放射する可視光をフィルターを使って検出することで、この突入天体の成分がほとんど水だけであることを突き止めたといいます。フランクは、このような雪玉が、毎分5ないし30個も地球に降りそそいでいると述べています。
実をいいますと、フランクは11年前、ダイナミックス・エクスプローラー1号衛星が撮影した地球の紫外画像に生じた暗い斑点を解析し、このような雪玉が分解して生じた水蒸気が紫外線を吸収したために斑点が生じたという主張をしたのでした。これは当時かなりの議論を呼び起こしましたが、「装置の欠陥によってこれらの斑点ができた」と考える人が多く、議論はそのまま立ち消えになっていたのです。フランクは、「こんどは確実な証拠をつかんだ」と今回の発表になったようです。
しかし、本当にこれほど多数の雪玉が地球に降りそそいでいるのでしょうか。保守的な考え方にとらわれているのかもしれませんが、広報普及室のメンバーは、このフランクの主張をそのまま受け入れる気にはまだなっていません。どうしてそのような雪玉ができたのか、これまでに探査機が発見できなかったのはなぜか、それほど高空で分解するのはなぜか、いくつもの疑問が湧いてきます。この結果は、まだいろいろの方面から確認を必要とする問題と考えています。
参照1997年6月5日 国立天文台・広報普及室