【転載】国立天文台・天文ニュース (103)

SOHOのコロナグラフから新彗星発見


アメリカ航空宇宙局(NASA)、ゴダード・スペースフライトセンターのステッツェルバーガー(Stezelberger,Shane)は、太陽観測のために打ち上げられた宇宙天文台ソーホー(Solar and Heliospheric Observatory;SOHO)のコロナグラフによる4月29日の撮像に、彗星が写っているのを発見しました。その明るさは2等ないし5等と見積もられています。これは直ちに新彗星と確認され、C/1997 H2(SOHO) の認識符号が付けられました。通称はソーホー彗星です。

この彗星はコロナグラフ上で5月4日まで追跡されました。彗星は太陽の西側から太陽に近付き、5月2日には太陽の北側で、見かけ上太陽半径の僅か2.88倍のところを通過して東側に出て、5日間に天球上を40度以上も移動しました。その間の観測から求められた暫定放物線軌道要素はつぎの通りです。ただし、コロナグラフの像から彗星の位置を精度よく決めるのが困難であるため、要素はかなり不確かと思われます。

近日点通過時刻 = 1997 May 2.83TT近日点引数 = 191.57度
昇交点黄経 = 227.21度 (2000.0)
近日点距離 = 0.1373 AU軌道傾斜角 = 18.42度

ソーホーのコロナグラフが新彗星を撮影したのはこれが最初というわけではなく、昨年8月から12月にかけて、同様に太陽の近くで、4個の彗星を発見していたことも続けて発表されました。これらのリストをつぎに示します。

認識符号近日点通過時刻発見者
C/1996 Q2(SOHO)1996 Aug. 22.13Shane Stezelberger
C/1996 Q3(SOHO)1996 Aug. 30.87  "
C/1996 S3(SOHO)1996 Sept.23.53D.Biesecker
C/1996 Y1(SOHO)1996 Dec. 23.26   "

これらの彗星は、C/1997 H2 を含めて、すべて太陽をかすめて通る軌道をもつ、クロイツ群に属する彗星と考えられています。太陽から遠いときは暗すぎて発見できず、太陽に接近したときだけ急激に明るくなって、コロナグラフに撮影されたものと思われます。

ソーホーは1995年12月2日に打ち上げられた、重量約2トンの、太陽観測を目的とした宇宙天文台で、地球と太陽を結ぶ直線上、地球から約150万キロメートルのところにあるラグランジュ点といわれる平衡点に位置しています。ソーホーはこの点にあって、地球と一緒に1年に1回の割合で太陽を回りながら、上記コロナグラフを含む12種の観測装置で太陽の観測を行っています。この観測は10年以上続けられる予定ですから、今後また彗星を発見することもあろうかと思われます。

参照

1997年5月15日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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