【転載】国立天文台・天文ニュース (78)

1690年にも木星に天体が衝突したか?


 日本天文学会、田部一志(たべいっし)、国立天文台、渡部潤一(わたなべじゅんいち)らの研究グループは、パリ天文台図書室の資料から、天体が衝突して生じたと推定される斑紋が1690年に木星表面に観察されている記録を発見しました。この発見は、当時理由がわからなかった斑紋出現に妥当な解釈を与えるとともに、天体衝突の頻度に対して新しい手がかりを与えるものとして注目されます。

 1994年7月に、いくつもに分裂したシューメーカー・レビー第9彗星の破片がつぎつぎに木星に衝突する事件がありました。当時は大きく報道されましたから、ご記憶の方も多いと思います。このときの衝突によって木星の表面に黒い斑点の衝突痕が生じ、その後しばらくの間は望遠鏡で観察することができました。

 彗星が木星に衝突するのを直接に観測したのはこのときが初めてですが、この事件によって、過去にも同様の衝突があったのではないかという可能性がクローズアップされました。1994年の結果からみると、木星表面に突然生じる黒斑が衝突の手がかりになるのは明らかです。この見地から、田部らは、もつとも古い観測歴をもつパリ天文台の資料で、1600年代から1700年代までの木星のスケッチを徹底的に調査しました。それが今回の発見となったのです。

 今回発見されたのは、フランスの天文学者カッシニ(Cassini,Giovanni-Dominique)によるスケッチと記録で、1690年12月に木星に突然出現した斑点を18日間にわたって追跡したものです。これによると、出現した斑点は、シューメーカー・レビー第9彗星が衝突したときに生じた斑紋と、大きさ、変形の様子、寿命などがたいへんよく似ています。このことから、この斑点も、やはり彗星などの小天体が衝突したことで生じた可能性が極めて高いと思われるのです。

 この発見については、1997年1月7日に記者発表が行われました。その内容は、画像を含めて、国立天文台ホームページに掲載されています。以下のアドレスにアクセスしてください。

英語版http://www.nao.ac.jp/whatsnew/jup/index-e.html
日本語版http://www.nao.ac.jp/whatsnew/jup/index.html

参照

1997年1月9日        国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

[天文ニュース目次] [星の好きな人のための新着情報]