【転載】VSOLJニュース(111)

たて座に新星らしき天体が出現


著者 :加藤太一(京大理)
連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 たて座に新星らしき天体の発見が報告されています。現時点でまだ公式の公表はなされていませんが、天体の存在が確実であることや、爆発後まもない天体と思われ、観測条件もよい位置のため、著者の独自の判断によってこのニュースでお知らせします。記載情報の多くは九州大学の山岡均氏からの伝聞によるものです。

 天体は8月28.577日、写真光度8.5等で発見と報じられています。非常に興味深いことに、ASAS-3 自動望遠鏡(VSOLJ ニュース 103参照)もこの天体を自動的に測定しており、画像も公開されています。ASAS-3の観測によれば、8月24.105日には14.0等より暗かったものが、26.096日に10.15等、28.096日に8.94等と急速に増光してゆく姿が捉えられています。ASAS-3の検出した新天体の位置は

  18h 49m 37s.7 (J2000.0)
  -09o 33' 52".7

 と記録されていますが、画像のスケールが小さいために位置には多少の誤差があるものと思われます。この位置のすぐ近くには16等程度の星が存在していたことがわかっており、もしこの天体が爆発前の天体で、新天体が新星であればかなり明るくなることが期待されました。ハワイの Mike Linnolt によって30.3416日になされた観測によれば9.5等と見積もられ、減光に転じた可能性があります。しかしながら、天体の素性がまだ明確でないこと、爆発前の天体の同定が確実でないため、今後どのような変動を起こすか現時点では信頼度の高い予測ができません。新星のあるものには極大に達する前に一時的に光度上昇が停滞するものも知られており、今後さらに増光する可能性も残されています。あるいは、もし16等程度の星が真の爆発前の天体であれば、別種の爆発型天体の可能性も依然残されています。

 天体は夕方から夜半前ぐらいに観測しやすい位置で、現在の等級であれば小型望遠鏡でも十分捉えられると思います。星図等の情報やASAS-3画像へのリンクは以下をご覧ください。

http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/nsct03.html

 なお、発見者や発見前後の観測などの詳細情報は近く IAUC などで公開されるものと思われます。

2003年 8月30日

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転載:ふくはらなおひと(福原直人)