【転載】国立天文台・天文ニュース(445)

カイパーベルト天体(20000)ヴァルナの直径と反射率


 エッジワース・カイパーベルト天体のひとつ、ヴァルナ(Varuna)の大きさと反射率が測定されました。求められた直径は900キロメートル、反射率は7パーセントでした。

 直径と反射率は、太陽系天体のもっとも基本的な物理量です。しかし、カイパーベルト天体は非常に暗いので、その測定は非常に困難です。これまでは、その反射率を彗星核の観測から得られた4パーセント程度と仮定し、それをもとに、見かけの明るさから直径を推定しているだけでした。しかし、この仮定が正しい保証はどこにもありません。つまり、これまでの大きさの推定は、かなりいい加減なものだったのです。

 この種の天体の大きさと反射率を別々に知るには、その天体の明るさと熱放射の観測を同時に行なう必要があります。この方法はメインベルトの小惑星には有効ですが、カイパーベルト天体は暗すぎるため適用するのが困難でした。しかし、ヴァルナがカイパーベルト天体としては非常に明るいことから、その観測が試みられたのです。

 ハワイ天文学研究所のジュイット(Jewitt,D.)たちは、2000年12月30日と31日、マウナ・ケア山のジェームズ・クラーク・マックスウェル望遠鏡(James Clerk Maxwell Telescope;JCMT)に装備した観測装置スキューバ(Submillmeter Common User Bolometer Array;SCUBA)によってサブミリ波によるヴァルナの熱放射の観測をおこない、同時にハワイ大学の2.2メートル望遠鏡により測光観測も実施しました。その結果、上記の直径700キロメートル、反射率7パーセントが得られたのです。冥王星やその衛星であるカロンをカイパーベルト天体に含めて考えれば、ヴァルナの直径900キロメートルは、冥王星(2400キロメートル)、カロン(1200キロメートル)についで大きく、カロンとこれまで最大であった直径600キロメートルのカイパーベルト天体の間を埋める大きさです。ただし、反射率はカロン(40パーセント)の約6分の1しかありません。これは表面に新鮮な氷の露出が少ないためかもしれません。それでも仮定の4パーセントよりかなり大きい値でした。

ヴァルナは2000年11月28日にキットピークの口径0.9メートル、スペースウォッチ望遠鏡で20等で発見され、格段に明るいカイパーベルト天体として関心を集めました。軌道長半径は43.05天文単位です。そのときの認識符号は2000 WR106でしたが、その後、小惑星番号20000番とヴァルナの固有名が与えられました。ヴァルナとは、天地を創造し支えているとされる古代インドの神の名です。

参照

2001年5月31日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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