【転載】国立天文台・天文ニュース()

CIコンドライトのテイギッシュ隕石


 今年の1月にカナダに落下した隕石は、ほぼ理想的な条件下に回収され、 これまでに研究された中ではもっとも始原的な炭素質隕石であることが わかりました。

 2000年1月18日の夜明けに、カナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の 北西部に隕石が落下しました。落下の際の火球の光はアメリカの軍事衛 星で検出され、大勢の人もその火球を見ました。70人以上の目撃証言と、 直後のダスト雲を撮影した24枚の写真、5つのビデオ記録を基に軌道が計 算され、この隕石は地平線と16.5度の角度で、北西から毎秒15.5キロメー トルの速度で飛来したことがわかりました。また太陽系内の軌道は、長 半径2.1天文単位、離心率0.57の楕円軌道で、典型的なアポロ型の小惑星 であることも確認されました。落下隕石の軌道を確定したのは、これが 5例目です。

25日になって、ブルック(Brook,J.)は最初の隕石破片を凍結したテイ ギッシュ湖の氷上で発見し、手で触れることなく注意深く回収しました。 彼はその後引き続いて数10個、總計0.85キログラムを発見しています。 さらに4月20日から5月8日までの公開捜査で、16×5キロメートルの範囲 の湖上で410個もの破片が発見されました。5キログラムのものが最大で した。これ以外に、森林や山地にも破片が落下しているとは思われます が、湖の名をとって、この一群の隕石はテイギッシュ隕石と呼ばれます。 落下後まもない捜索と、寒冷地の凍った湖の上、注意深い取り扱いなど により、汚染をこれほど最小限に押さえた隕石はあまり例がありません。 これは今後の研究に大いに役立つと思われます。

 その後の分析によって、このテイギッシュ隕石はCIコンドライトと呼 ばれる、もつとも始原的な隕石であることが明らかになりました。CIコ ンドライトはここ200年の1000回におよぶ隕石落下の中でわずか5例に過 ぎず、南極の採集でも2例の15グラムしかありません。今回の落下は、始 原的な隕石を研究する上でたいへん貴重なものといえましょう。

参照

2000年11月2日 国立天文台・広報普及室

訂正:天文ニュース(388)の土星の新衛星に関するニュースで、ヨーロッ
      パ宇宙機構(ESA)の2.2メートル反射望遠鏡とお伝えしましたが、正
      しくは欧州南天天文台(ESO)の2.2メートル反射望遠鏡でした。お詫
      びして訂正いたします。

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※ 国立天文台・天文ニュース (390) (391) の発信が都合により本日    になってしまいまいました。お詫び申し上げます。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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