【転載】国立天文台・天文ニュース(360)

ポルトガルがESOに加盟


 ポルトガルがヨーロッパ南天天文台(European Southern Observatory;ESO)の正式なメンバーになることが決まりました。

 ヨーロッパ南天天文台ESOは、ヨーロッパの天文学者に最新の観測設備を提供し、天文学の分野での協力を進めるために作られた研究組織で、1962年に発足しています。これまでの加盟国は、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スエーデン、スイスの8ヶ国でした。本部はドイツ、ミュンヘン市郊外のガルヒンク(Garching)にあります。また観測施設としては、チリのラシーヤ(La Silla)に口径3.6メートルの望遠鏡を主体とする大規模な天文台があります。さらにチリのセロパラナル(Cerro Paranal)には、口径8.1メートルの望遠鏡VLT(Very Large Telescope)4基を建設中で、その一部はすでに観測を始めています(天文ニュース179)。この大きな設備をもつESOに、今回ポルトガルが9番目の国として加盟することになったのです。 加盟式典はこの6月27日に、ガルヒンクのESO本部でおこなわれました。ポルトガルの高官およびESO加盟各国の代表の前で、ESO長官のセザースキー(Cesarsky,C.)と、ポルトガルの科学技術相ガーゴ(Gago,J.M.)が議定書に署名し、これによってポルトガルのESOへの加盟が決定したのです。公式には、ポルトガル議会の批准を待って、2001年1月1日からの加盟ということになります。

 ポルトガルとESOとの協力関係は10年前に始まっています。1990年に協力の同意がとりつけられ、それ以後ポルトガルの天文学者は、ESOの施設を利用して研究を進める一方、若い天文学者の育成に努力してきました。ポルトガル政府も天文学の発展と下部組織の充実に努力し、財政的支援をおこないました。それらの努力が実を結び、ポルトガル科学界の科学的発展と国際化の進展が進み、ESO加盟に十分な基礎ができたと判断されて、今回の正式加盟が実現したのです。

 10年経った今日の状態を見ますと、ポルトガルの天文学者はヨーロッパ諸国でもっとも若く、その90パーセントがここ10年以内にPh.Dをとった人たちです。紫外から中間赤外にわたる波長域で、VLTを始めとする最新設備で観測をするこれらの天文学者は、ポルトガルの科学者への大きな刺激になっています。

参照

2000年6月29日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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