【転載】国立天文台・天文ニュース(336)

銀河系内のガンマ線源に2種類


 銀河系内の安定したガンマ線源は、大きく2種に分けられるということです。

 ガンマ線とは、非常に波長の短い電磁波です。0.1nm(ナノメートル)以下の波長のものがガンマ線と考えればいいでしょう。ガンマ線は地球大気に吸収されますから、ガンマ線源を地上で観測することはできず、人工衛星などを使って宇宙空間で観測します。

 1991年にスペースシャトルから放出されたコンプトン・ガンマ線観測衛星は、400以上のガンマ線源、2500以上のガンマ線バーストを捕らえました。その中には、銀河系内にある100MeV(メガエレクトロンボルト)以上の安定した点状のガンマ線源が120個も含まれています。これらのガンマ線源がどんな天体に対応するかは、まだはっきりしていません。パルサー、超新星残骸、ブラックホールなど、いろいろの可能性が考えられます。

 NASA、ゴダード・スペースフライトセンターのゲーレルズ(Gehrels, N.)たちは、コンプトン衛星の観測結果を解析し、これらの安定した点状ガンマ線源が二つの種類に分かれることに気付きました。第1種のものは銀河面に沿って存在する明るいガンマ線源で、太陽からは数1000光年離れている遠いものです。第2のものは銀河面からやや離れたグールド帯に沿って存在するやや暗いガンマ線源で、平均600光年ほどの近距離にあります。第1種に比べると、距離が近い上に暗いので、実際の明るさは75分の1程度と推定され、明らかに第1種と異なる性質のグループを形成しています。おそらく、星形成の活発なグールド帯の恒星と何らかの関係があるのでしょう。たとえば、超新星爆発の後に残ったパルサーかもしれないとゲーレルズたちは推測していますが、確定的ではありません。

 グールド帯とは、「オリオン座」、「おうし座」、「ケンタウルス座」、「おおかみ座」などを通る、明るさが目立つ星をたくさん含んだ天球状の帯状の部分をいいます。銀河面とは20度ほど傾いています。太陽系に比較的近く、銀河系の腕から突きだした形で星形成が盛んにおこなわれている領域と考えられています。

 コンプトン衛星は、ガンマ線を検出するスパーク・チェンバーのガスをほとんど使いきった上に、ジャイロスコープの1台が故障したこともあって、もう寿命がなく、6月以降に廃棄される予定ということです。しかし、2005年には、さらに高精度の観測が可能なガンマ線広域宇宙望遠鏡(Gamma-ray Large Area Space Telescope; GLAST)の打ち上げが予定されています。その観測により、さらにはっきりしたことがわかるでしょう。

参照

2000年3月30日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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