【転載】国立天文台・天文ニュース(319)

地球接近小惑星が半減か


 地球に衝突する可能性のある小惑星の数が、これまでの見積もりの約半分であるという研究結果が報告されています。

 小惑星・彗星が地球に衝突し、人類に大きな被害を与える可能性が以前から指摘されています。これらの衝突を予測し、被害を最小に止める計画の一環として、衝突の可能性のある天体(Near-Earth Objects; NEOs)を検出する作業が進められています。これまで、地球と衝突するおそれのある小惑星のうち直径1キロメートル以上のものは、1000個ないし2000個程度と見積もられていました。この数は、今後1000年間にそのどれかが衝突する確率が1パーセント程度であることを意味します。

ジェツト推進研究所のNEAT(Near-Earth Asteroids Tracking programme)チームはハワイ、マウイ島、ハレアカラ山頂に設置した口径1メートル望遠鏡にCCDを装着して、系統的にNEOの自動捜索をしています。自動捜索は、現像したフィルムを目で見て探す以前の方法に比べてずっと能率的で、個人差を避けられるということです。そして、1996年3月から1998年8月までの期間に、極限等級19.1等までの空35000平方度を捜索し、45個のNEOを発見しました。反射能0.1を仮定しますと、このうち18等より明るい26個が直径1キロメートル以上のものになります。

 エール大学のラビノビッツ(Rabinowitz,D.)らは、捜索した視野と検出効率を考え、もっともらしい軌道をもつ仮想のNEOをたくさん置いてコンピュータ・シミュレーションをおこない、どのぐらいの数の小惑星が発見できるかを計算しました。その結果と比較することから、上記の観測数から推定される直径1キロメートル以上のNEOの数は、およそ700個になるという結果を得ました。この数は、以前の見積もりのほぼ半分に過ぎません。また彼らは、今の状況で捜索を続けるなら、今後20年間で、直径1キロメートル以上のNEOの90パーセントを発見できると推定しています。

 仮に数が半分であったとしても、地球衝突の危険性がそれほど大きく減るわけではありません。また、1キロメートル以下の小惑星でも危険があります。どんなに確率が小さくても、仮に衝突が起こったとすると、その被害は測りしれないものがあります。この結果から、天体衝突の危険を軽視することは決してできません。

参照

2000年1月20日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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