【転載】国立天文台・天文ニュース(297)

今年の「しし座流星群」


 今年も「しし座流星群」の期日まであと1ヶ月余りとなり、、国立天文台にも問い合わせが増えてきました。今年はどのように流れ星が見えるでしょうか。

 実をいいますと、昨年の「しし座流星群」では、流星出現数のピークになる時刻が予測と大きくずれました。11月18日の午前5時ころと予想していたのに、実際のピークは17日午前11時ころで、予想より19時間も早かったのです(天文ニュース220参照)。そのため、ヨーロッパでたくさんの流星が見え、日本で見えたのは、出現が衰えていく裾の部分だけでした。そのため、流星数は期待ほどではありませんでしたが、それでも明るい流星がいくつも見え、また見事な流星痕も現れて、観望していた人々を喜ばせました。

 今年の出現のピークは、日本時間で11月18日11時ころと計算されています。このとき日本は昼間ですから流星は見えず、ヨーロッパが観測に都合がいい地域といわれています。しかし、昨年19時間も早くピークがきたことを考えると、今年この予測通りになるかどうか、だれにもわかりません。仮に昨年同様ピーク時刻が19時間早まれば、アメリカが観測適地になり、また、もし8時間早まることがあったなら、日本がちょうど都合のいい場所になります。しかし、ピーク時刻が早まるか、あるいは遅れるかは、いまのところ予測できないのです。一般的にいうと、「しし座流星群」に限らず、ピーク時刻は計算より早まることが多いという傾向はあります。

 見える流星の数はどのくらいでしょう。ピーク時で1時間あたり数10個、せいぜい100個というのがもっとも妥当な見積もりでしょう。「今年は非常にたくさんの流星が見える」という予測を発表している人もいます。しかし、それを鵜呑みにすることはできません。その可能性がまったくないわけではありませんが、このような大出現があったとしても、その時間は短く、日本でそれが見える確率は小さいものです。過大な期待はできません。

 今年、日本で「しし座流星群」の流星がもっともよく見えるのは、11月17日の23時ころから18日の夜明けまでの期間です。この間に「しし座流星群」の流星は必ず見えます。通常の観測条件であれば、1時間に20個くらいは見えるでしょう。それ以上に見えた分は、おまけで、幸運を喜べばいいのです。

 昨年流星をご覧になった方はおわかりでしょうが、「しし座流星群」では、明るい流星がたくさん出ます。これらは都会の空でも十分に見えます。特別に精密な観測をしようというのでない限り、暗い空を探して遠出をする必要はありません。自宅の近くで都合のいい場所を探してご覧になることをお勧めいたします。

1999年10月7日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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