【転載】国立天文台・天文ニュース(295)

すばる望遠鏡完成記念式典


 1999年9月17日(金)午前11時(ハワイ現地時間)、国立天文台がハワイ島マウナケア山頂(標高4205メートル)に9年の歳月をかけて建設した「すばる望遠鏡」の、完成記念式典が行われました。式典には紀宮清子内親王殿下がご臨席され、トーマス・フォーリー駐日米国大使、佐藤禎一文部事務次官、ケネス・モティマーハワイ大学長、ほか米日からの来賓各位を含め2000名近い参加者がありました。式典はすばる望遠鏡ドーム内にある観測フロアーで行われました。4000メートルを超える高山での式典に、これだけたくさんの方々が集まるのは異例のことです。高山に登る心得をきちんと守っていだだいたため、幸いに高山病にかかる方もなく、参加者全員が無事に下山されました。

 光学赤外線望遠鏡「すばる」は1991年に建設が始まり、1999年1月にファーストライトを迎えました。その後、数ヶ月にわたる望遠鏡の調整と試験観測の結果、補償光学を使用しない状態でも星像直径が0.2秒角をきるなど、そのすぐれた性能が確認され、いよいよこの日、声高く、すばる望遠鏡の完成が宣言されたのです。すばる望遠鏡は有効口径8.2メートル、1枚鏡の主鏡を用いる望遠鏡としては世界最大級のものです。

 これまで、日本最大の光学望遠鏡は、1960年に岡山県鴨方町に建設された口径188センチメートルの望遠鏡でしたから、すばる望遠鏡は、日本の光学赤外線観測天文学者にとって、構想から20余年かかってやっと完成した悲願の望遠鏡なのです。それだけに、式典に参加された藤田良雄学士院院長をはじめご高齢の研究者の皆さんや、すばるの建設に直接携わってきたスタッフの方々の晴れ晴れしい笑顔が、とても印象的でした。

 会場では、開会に先立ち、ハワイ大学のカレナ・シルバ司祭らによるチャント(ハワイに伝わる献堂のお祈り)が捧げられました。式典は、海部宣男国立天文台ハワイ観測所所長の司会のもとに厳かに執り行われました。最初に、9年間の建設中に不幸にして事故でお亡くなりになった4名の建設担当者に対し、参加者全員の黙祷が捧げられました。続いて、小平桂一国立天文台台長のすばる完成の宣言を含む歓迎の辞の後、紀宮清子内親王よりお言葉がありました。殿下は、式典の前夜、すばる望遠鏡のナスミス焦点で眼視で天体観望をされたときの感動を素直に表現されつつ、すばる望遠鏡建設の労をねぎらうお言葉と、これからのすばる望遠鏡の活躍の期待を表明されました。その後、文部大臣祝辞の代読、臨席された来賓各位の祝辞、小渕恵三内閣総理大臣からのメッセージの披露がありました。最後に、参加者の目の前ですばる望遠鏡が天頂に向かって動き、望遠鏡に吊されたくす玉が見事に開きました。同時にドームのスリットが全開になり、ドーム全体が時計回りに回転し、参加者の驚きの中、マウナケア山頂のすばる周辺のドーム群を目の当たりに見渡すフィナーレの演出に、感動のあまり目に涙を浮かべる参加者も見受けられました。なお、当日の夕方には、麓のハワイ大学ヒロキャンパスで、500人の参加者により、華やかに完成記念祝賀会も行われました。

 すばる望遠鏡は、来年秋から始まる観測公募の受け付けに向け、さらに望遠鏡の調整作業や各種装置によるテスト観測が続けられます。兄貴分のケック1,2号機、ジェミニやVLTといった姉妹望遠鏡、さらには先輩のハッブル宇宙望遠鏡等とともに、今後、すばる望遠鏡も宇宙の果てや太陽系の果てに関する宇宙の謎解きに迫り、人類の知識に大きく貢献することでしょう。

1999年9月30日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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