【転載】国立天文台・天文ニュース(285)

ディープ・スペース1号が小惑星ブライユに接近


 アメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙探査機ディープ・スペース1号(Deep Space 1)は、この7月29日4時46分(世界時)、小惑星(9969)ブライユに26キロメートルまで接近し、種々の観測をおこないました。探査機が小惑星にこれほど接近したのは、これまでに例がありません。観測結果の速報によると、ブライユは長く伸びた不整形で、およそ2.2キロメートルに1キロメートルの大きさでした。この観測で得られたスペクトルが小惑星(4)ベスタに非常によく似ていることから、ブライユはベスタから欠けた破片ではないかという議論が起こっています。

 ディープ・スペース1号は、NASAが計画している新千年紀プログラム(New Millennium Program)の最初の宇宙探査機として、1998年10月24日にフロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げられました。この探査機は、キセノンのイオンを電気的に毎秒30キロメートルにまで加速して噴出するイオンエンジンを搭載するなど、将来の宇宙計画の経費と危険を削減するための深宇宙に対する12種の新技術をテストする目的で打ち上げられたものです。その後9か月をかけて、この小さな小惑星ブライユに到達しました。このミッションは1999年9月で終了の予定でしたが、さらに延長することになり、ディープ・スペース1号は、2001年1月にウィルソン・ハリントン彗星(107P/Wilson-Harrington)に、また2001年9月にボレリ彗星(19P/Borrelly)に接近して観測する予定になっています。

 一方、小惑星(9969)ブライユは、1992年5月27日にヘリン(Helin,Eleanor)とローレンス(Lawrence,Kenneth)がパロマー山の46センチ、シュミット望遠鏡で発見した小惑星です。この名は、点字を発案して盲目の人に福音をもたらしたフランスのブライユ(Braille,Louis;1809-1852)にちなんで名付けられたものです。大きくつぶれた楕円軌道をもち、もっとも太陽に近づくときには、火星軌道と地球軌道の中間あたりにまで到達します。

参照

1999年8月19日           国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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