【転載】国立天文台・天文ニュース(283)

ニア、小惑星エロスを接近観測


 小惑星探査機ニア(NEAR;Near Earth Asteroid Rendezvous)は、昨1998年12月23日18時41分23秒(世界時)、小惑星(433)エロスに3827キロメート ルの至近距離にまで接近し、222枚の撮像をするなど、種々の観測をおこないました。最近発表されたその解析結果によりますと、エロスは、およ そ33x13x13キロメートルの、細長く伸びた、「そらまめ」あるいは「バナナ」のような形で、地上観測で推定されていた形とかなりよく一致してい ました。また、エロスの質量は7.2x10の15乗キログラム、体積は約2900立方キロメートルであることがわかりました。ここから、エロスの密度は、 1立方センチメートルあたり2.5グラムであることが求められます。これは、ガリレオ探査機が1993年に接近観測をした小惑星(243)イーダの密度とほ ぼ等しいものです。

 当初の計画では、探査機ニアは、1999年1月にエロスを周回する軌道に入る予定でした。しかし、12月20日に主エンジンの点火に失敗し、ニアは 毎秒965メートルの相対速度で、エロスのそばを通り抜けてしまったのです。その結果、周回軌道からエロスを精密観測する計画は、2000年2月半 ばまで延期されることになりました。

 エロスはいまから101年前の1898年8月13日、ベルリンのウイット(Witt,G)によって発見されました。軌道長半径が1.46天文単位と火星よりも小さく、 「小惑星は火星と木星の軌道の間にある」という概念を最初に打ち破った小惑星です。離心率が0.22とかなり大きいため、2230万キロメートルまで 地球に近付く可能性があり、地球接近小惑星としては、(1036)ガニメドに次いで2番目の大きさのものになります。地球に2300万キロメートルにま で接近した1931年には、太陽系のスケールを決めるため、国際的な協同観測がおこなわれました。反射スペクトルはS型で、小惑星としてはもっと も普通の種類のものです。

 ニアは1996年2月にアメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げた小惑星探査機で、1997年6月27日には、小惑星(253)マチルドに接近観測をおこなって います。これで、接近観測がなされた小惑星は、木星探査機ガリレオが観測した(951)ガスプラ、(243)イーダを含めて4個になりました。

参照

1999年8月12日 国立天文台・広報普及室

訂正:天文ニュース(280)の2000年の日食記事には、2月5日に南極で見られる部分食、7月1日に南米南端で見られる部分食が脱落していました。 お詫びして追加いたします。


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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