【転載】国立天文台・天文ニュース(233)

新彗星 C/1999 A1、海王星と冥王星の日心距離の逆転


新彗星 C/1999 A1

今年最初の新彗星が発見されました。オーストラリアのティルブルーク(Tilbrook,J)が口径20センチの反射望遠鏡により、眼視で「ちょうこくしつ座」に発見したもので、フォーマルハウトのやや西のところです。明るさは10.5等、南に移動している模様です。観測期間が短いため、軌道は求められていません。その後の観測で、直径1分のコマがあり、位置角80度の方向に3分の長さのかすかな尾が認められるということです。今年の最初ですから、認識符号はC/1999 A1です。今の段階で正式の発表はありませんが、おそらくティルブルーク彗星と名付けられることでしょう。そうだとすると、1年半前の C/1997 O1(Tilbrook) 以来のことになります。日本からはたいへん見にくい位置です。

参照


海王星と冥王星の日心距離の逆転

1979年1月に冥王星の日心距離が海王星の日心距離より小さくなって、それ以来約20年間、冥王星の方が海王星より太陽に近い状態が続いていました。1989年9月に近日点を通過した冥王星は、またしだいに太陽から遠ざかり、この2月に海王星より遠くなります。いうならば、通常の順序に戻るわけです。

この日心距離の逆転が起こる日時ですが、これは計算に採用する暦によって多少異なります。もちろん真実の時刻はあるはずですが、人間の作る暦に100パーセントの正確さを期待することはできませんから、それが正確に決められないのは止むを得ないことです。たとえば、ジェット推進研究所が編集した非常に精度の高い暦といわれるDE245によって計算しますと、この逆転が起こる時刻は、1999年2月12日1時半頃になります。そのときの日心距離は、ともに30.13189天文単位です。しかし、この時刻が絶対に正しいわけではなく、別の暦のDE200によって計算するとこの日時は2月9日になり、日心距離もわずかに異なります。それ以外にも、採用する暦によって、多少異なる時刻がいくつも計算されます。結局、この日時に対してあまり細かいことを要求しても無意味で、2月前半に日心距離が逆転するという程度に考えておいた方がいいでしょう。

1999年1月14日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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