【転載】国立天文台・天文ニュース(152)

小惑星マチルドの質量と密度


昨年6月27日に、宇宙探査機ニア(Near Earth Asteroid Rendezvous;NEAR)が小惑星(253)マチルドに接近観測をおこないました(天文ニュース113)。そのときの観測データが詳細に解析された結果、マチルドの質量は1.033x10の23乗グラム、また平均密度は、1立方センチ当たり僅かに1.3グラムしかないことがわかりました。

ニアは世界時の6月27日12時55分54.5秒に、毎秒9.93キロメートルの相対速度で、マチルドから1212.2キロメートルのところを通過し、口径比3.4の屈折望遠鏡に取り付けたCCDカメラで534枚のマチルドの撮像、その他いくつかの観測をおこない、そこから上記の解析がなされたのです。この撮像に要した時間は約25分でした。マチルドは自転周期が17.4日で、非常にゆっくり自転しているため、その表面の半分程度しか観測できませんでした。しかしそこには、直径19キロメートル以上もある大クレーターが5つも見られ、最大のものは直径33キロメートルもありました。この観測から得られたマチルドの大きさは、三軸楕円体近似で直径が66x48x46キロメートル、体積は7万8000立方キロメートルでした。

小惑星の質量を決めるのはたいへんに困難な作業です。これまでに一応の精度で質量が求められたのは、(1)ケレス、(2)パラス、(4)ベスタなど比較的に大きいものと、探査機が接近した(243)イーダなど、ほんの数個だけです。天体の質量を決める方法はただひとつ、その天体の引力が他の天体の運動にどの程度影響を与えるかを観測するしかありません。よく知られているように、引力の大きさはその質量に比例し、影響を与える天体までの距離の2乗に反比例します。したがって、求めようとする天体の質量が大きいほど、また影響を受ける天体の距離が近いほど、質量の決定は容易です。しかし、一般に小惑星は質量が小さく、また、そこに近づく天体もめったに観測できないため、小惑星の質量決定は困難なのです。これに反して、探査機は非常に近くまで小惑星に接近しますから、その軌道を精密に観測することによって小惑星の影響がわかり、小惑星の質量が決定できるのです。

今回の解析でマチルドの質量、平均密度が求められました。一方マチルドはC型の小惑星であることがわかっています。C型はコンドライト隕石と似ている小惑星で、特にマチルドはその表面スペクトルがCM型炭素質隕石ととてもよく似ています。しかし、一般にCM型炭素質隕石の密度は1立方センチ当たり2.8グラムと、マチルドの密度の2倍以上もあります。したがって、もしマチルドがCM型炭素質隕石と同様の物質で構成されているとすれば、その半分は空隙であり、スカスカの構造をしていることを意味します。今回求められたマチルドの平均密度は、他の小惑星との衝突を繰り返して細かくこわれた結果、マチルドが、石をガラガラと積み上げたような空隙の多い構造をしていることを示しているのかもしれません。

参照

1998年1月8日         国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

[天文ニュース目次] [星の好きな人のための新着情報]